【この本はこんな人におすすめ】
・絵本業界に風穴を開けた手法が気になる人
・SNSが高度に発達した現代の、お金の作り方や広告の具体的効率的方法について気になる人
・商品を消費者に届ける為に必要なことが知りたい人
こんにちは。
常に2冊は本を持ち歩くべる(@belltea910)です。
今回紹介する本は、キングコング西野さんの著作『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』です。
キングコング西野さんと言えば、「炎上」「芸人」「収録ぶっち」「絵本作家」というイメージがあるのではないかと思います。
「えんとつ街のプペル」はインターネットで無料公開され、話題(炎上?)となったことも記憶にあるのではないでしょうか。
そんな異色の芸人である西野さんの2冊目のビジネス書。
内容を紹介しつつ、僕なりの感想と意見を書いていこうと思います。
※通して読むと長いので、目次から気になるところを選んで読むと良いかと思います。
1.キーワードから読む「革命のファンファーレ」
タイトルに「現代のお金と広告」とあるように、この本は主に2つの軸で話が展開されています。
・インターネットが発達した現代における新しい広告手法
・人との繋がりが容易になった現代におけるお金の流れ
この軸に、一冊を通して高頻度で出現する言葉「信用」が鍵となっています。
全編の内容を載せるわけにはいかないので、部分的な内容ではありますが具体的に見ていきます。
・インターネットが発達した現代における新しい広告手法
これまで、商品を広報する方法は限られていました。
TVCMを流す、雑誌に掲載する、DMを送付する、試食や試供品を提供する。
これらはどれも、企業が中心となってマスに対する訴求方法です。
企業がその商品のCMを作り、テレビ局にお金を払ってCMを流す。
企業が出版社に出資し、商品広報ページを割いてもらう。
企業が個人宅に新商品についてのDMを送付する。
店頭で売り子が試食や試供品を提供する。
これらの訴求方法が、現代では大きく転換しつつあると展開されています。
ご存知の通り、西野さんの絵本「えんとつ街のプペル」はインターネット上で無料公開されました。
それだけで絵本業界にとっては激震となり、かなり批判をされたようです。
それだけではなく、絵本業界の常識である「絵本は一人で作るもの」という固定概念を打ち破り、業界初の「分業制」を採用。
業界が長年培ってきた基盤、常識をことごとく打ち壊してきたのです。
一見無茶とも見える手法を取ってきたにも関わらず、「えんとつ街のプペル」は10万部を超える出版冊数を記録。
5000部売れればヒット作と言われる絵本業界にとって、10万部という数がいかに快挙であるかは想像に難くありません。
その裏には、綿密に計算された販売戦略がありました。
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絵本を買う人は、小さな子どもに買ってあげたいと思うお母さん方です。
ターゲット層であるお母さん方が絵本を買う際、どのような意思決定をするのか?
お金の制約がある中、自分の子どもに買ってあげる絵本選び。
何としても失敗するわけにはいきません。
お母さん方は図書館で絵本を読み、本屋で立ち読みをし、できるだけ失敗しないような納得できる絵本を選びます。
しかし、そんなお母さん方は時間の制約も大きい。
となると、手に取られやすい絵本は、自分が小さいころ読み聞かされた絵本。
内容のクオリティが信用できるからです。
そこに目を付けた西野さんは、インターネットでの無料公開をすることで、お母さん方の絵本選びの不安を取り除きました。
無料公開一つ取っても、縦スクロールにするのか横スクロールにするのか、その理由は何か・・・等、細かなところまで綿密に計算されています。
画面の向こうの相手について細かいところまでイメージしての戦略だったのです。
ここでひとたびお母さん方の話題となれば、あとは放っておくだけで売れていきます。
インターネットを活用した口コミのなせる技です。
「現代の広告」とは、インターネットを活用した口コミについての戦略だったのです。
これを行うには、関係者との綿密な信頼関係が必要。
長期間に及ぶ、綿密な計画の元に設計された戦略でした。
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・人との繋がりが容易になった現代におけるお金の流れ
インターネットの発達により、お金の流れも流動性を増しています。
例えば、クラウドファンディング。
支援者を集める行為は、発案者にも支援者にも、誰もがなれる時代です。
西野さんのクラウドファンディングが数千万の資金調達に成功しましたが、これは「芸能人だから成功した」とは言い切れない背景があると書かれています。
過去にロンドンブーツの田村淳さんなどもクラウドファンディングに挑戦したそうですが、結果は目標金額が集まらず失敗。
この背景には、芸能人がテレビ番組で求められる「嘘」が影響していると指摘します。
食レポ番組では、多くの芸能人の方が「おいしい」との感想を口にします。
しかし、現代のようにインターネットが発達しSNSが広まった社会では、そのお店が本当においしいのか、美味しくないのかといった評価を瞬時に検索することが出来るのです。
番組ではリポーターが美味しいと言っているのに対し、食べログなどの評価が低いと、そのリポーターが嘘を言っているのではないかという疑惑が広がります。
こうして芸能人は知らずの間に信用を失っている、というのです。
信用を失った芸能人は、いくら知名度が高くても支援しようという気分にはなりません。
これが、芸能人とクラウドファンディングの相性が悪い、という理由です。
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このように、相互監視が行われているともいうべき現代のお金の流れとは何なのか。
本では、無料化された「えんとつ街のプペル」を例に書かれています。
従来、商品やコンテンツに対してお金が支払われる場合、
金銭支払い→コンテンツ使用
という流れのやり取りが行われていました。
それが、現代では金銭支払いのタイミングが後ろにずれている、という指摘です。
「マネタイズのタイミングをずらしている」という言葉が使われています。
最も想像しやすい例は、スマホのゲームです。
ゲームをして、楽しいと感じたユーザーは課金という形でお金を支払い、よりゲームを有利に進めさらに楽しみます。
これをスマホゲームだけではなく、絵本で行ったのが今回のケースです。
無料公開することで口コミとして広がる、という点は現代の広告でもお話しした通りですが、人とのつながりが容易になった現代だからこそ発生する新たなお金の流れとも言えます。
2.感想
クラウドファンディングの話や信用貯蓄の内容については、僕のTLでは度々流れる話題でした。
しかし、この本で断片化されていた情報がつながり活用方法をイメージできた、という意味ではとても為になった部分です。
この本の中にも、読者を想定した様々な仕掛けがあり、その種明かしもされており、
消費者を細部まで想像した商品提供のイメージがこれまた具体例を伴って理解することが出来ました。
本の中には度々以下のようなページが現れます。
これは著者曰く、「SNS等に載せやすくすることで自分の手を離れた広告がなされることを狙った」ページです。
見事に僕もこの策略にはまっています。
こうしてブログ記事に掲載しているのですから。
さらに特筆すべきは、文章の読みやすさ。
僕は文字の詰まった本はやや読みにくく、集中力が続きません。
反面、この本は文の間に余白がとられ、比較的読みやすいです。
なぜこのような読みやすい/読みにくいといった事が余白の有無によって作られるのか。
以下は僕の持論です。
普段活字に慣れた人は、文字の詰まった本でも全く苦にならないのでしょう。
しかし、僕のように月に2~3冊程度しか読まない人にとって、細かい文字が詰まった本はやや読みにくい。
これが月に1冊も読むかどうかといった層にとっては余計に読みにくい事でしょう。
そこで著者は、文章の間に余白を多めに取り、さらに先ほど挙げたような1ページに1文のみのページも作り、「サクサク読み進める快感」を与えているのだと思います。
そうすることで、普段なかなか本を読まない人にとっても読みやすく、さらに「読みやすかった」という体験がSNSでの拡散材料になる。
そこで先ほどの写真のページを用意し、格好のSNS掲載ポイントを提供する。
このように考えていくと、著者が芸人+絵本作家であることから、想定読者は普段からビジネス書を読むサラリーマン層だけではなくファンや絵本から入った主婦層まで想定されていることが考えられます。
どんなに素晴らしい事が書いてある本でも、読まれなければ存在しないと同義です。
本を作るときは、読者をストレスなく最後のページまで運べなければ良本にはなれないというメッセージが込められているのだと受け取りました。
反面、著者のブログを全て追っている人にとっては既知の情報がとても多いのかもしれません。
ブログをコピペしてある内容ではもちろんありませんが、似た内容であることは間違いありません。
とはいえ、そのようなファン層ももちろん想定読者としてカウントされているはずですから、本がより具体的でありわかりやすい内容であることは間違いないでしょう。
という訳で、今回は『革命のファンファーレ』著:西野 亮廣 についての書評記事でした。