「今日成功したと言って、明日も成功するとは限らない。」
こんばんは。べる(@belltea910)です。
前回記事では、アダム・グラント著の
”GIVE&TAKE 「与える人」ほど成功する時代”から「責任のバイアス」についてご紹介しました。
今回は続く第二弾として、「視点のずれ」をご紹介します。
「良いことは続く」「悪いことは続く」といったイメージがありますが、
果たしてそうなのでしょうか?
視点のずれによるバイアスがかかっているのかもしれません。
1.視点のずれとは
心理的身体的興奮状態を経験していないとき、人はそれが自分に与える影響を過小評価する傾向にある。
心理的身体的興奮状態を経験しているとき、人はそれが自分に与える影響を過大評価する傾向にある。
これだけを見てもよくわかりません。
例を出して考えてみましょう。
例:冷凍室で5時間座るつらさを予測する実験
グループA:暖かい湯の入ったバケツに腕を入れた状態で、冷凍室で5時間座るつらさを想像してもらう。
グループB:氷水の入ったバケツに腕を入れた状態で、冷凍室で5時間座るつらさを想像してもらう。
グループC:氷水に腕をつけて出し10分後、冷凍室で5時間座るつらさを想像してもらう。
結果:グループAのつらさ度合いを1とした場合、グループBは平均14%、よりつらいと想像した。一方、グループCはグループAと同様のつらさを想像した。
例:医者は患者の苦しみを過小評価する
けがや病気などでお医者さんへ行くとき、時々「触診」が行われます。
腹痛の時におなかを押しながら「ここ痛いですかー」とかやるアレです。
やられてみるとわかるのですが、痛めつけようとしているかのように強い力で押してくる時があるんですね。
一定の力をかけて触診しないと効果が無いということもありますが、
これは医者が患者の痛みや苦しみを過小評価していることにも原因があります。
自分の身に起こっていないことなので仕方がないことではありますが、
これも視点のずれによる結果と言えるでしょう。
ここまでを踏まえると、記事冒頭での問いに答えることが出来ます。
「良いことは続く」「悪いことは続く」といったイメージは正しいのか、という問い。
正しくは、
心理的身体的興奮=良い事or悪い事の影響を無意識で過大評価することで、
記憶に残りやすくなった結果そういうイメージがついてしまっている
ということになりますね。
こうした一連の視点のずれを、giverは「自分のモノの見方を相手の視点に合わせる」ことで解決します。
例:結婚祝いはハズレが多い
結婚祝いにハズレの品が多いと感じる人が多いそうです。
これは、「送る相手(=新婚者)が公開している欲しいものリストの品よりも、私が選んだ品の方がうれしいはずだ」と思って結婚祝いを渡す人が多いからとのこと。
(事前に欲しいものリストが公開されていない場合でも同様にハズレの品が多いとは感じるのではないでしょうか。)
本中では詳細まで紹介されていませんでした。なのでここからは憶測になります。
自分(=結婚祝いを送る側)が経験した身体的肉体的興奮状態(=結婚式というおめでたい場への感動)により、自分のプレゼントがよりいっそう喜ばれると過大評価されたと読み取れます。
自分はそう思うだけであって、受け取る側がどう感じているか考えられていないところに原因があります。
これも視点のずれ。
プレゼントを贈るときは冷静になって相手の立場に立って考えることが必要になるわけですが、
その他の場面でも相手の立場に立って行動できると良いですね。
自分の周囲の人が少しでも幸せになることができれば、
きっと自分にも良い結果が返ってくることでしょう。
2.ちょっと待って、それって「自己犠牲ギバー」じゃない?
「
自分の周囲の人が少しでも幸せになることができれば、
きっと本人にも良い結果が返ってくることでしょう。
」
僕は先ほどこう書きましたが、
これは前回の記事の「責任のバイアス」による不幸が起こってしまう場面です。
GIVE&TAKE「与える人」ほど成功する時代 その1 "責任のバイアス" - 日常の隙間で
このような自己犠牲ギバーは、本の後半では搾取される存在として書かれます。
自分の心身や体力という限られたリソースを消費し過ぎてしまわないようにすることが必要です。
もちろん他者のために動くことはとても素晴らしいことだと思いますし、
自分の行動によって幸せになる人が居ること自体が幸せなことだと思います。
成功するギバーになるためには他者志向性が必要とまとめられていますが、
これについてはまた別のところで。
(成功する という目標がある時点でギバーではなくマッチャーやテイカーのように感じますが、あくまでも他人に施すことを前提とした 成功したギバー という考え方です。)
3.視点のずれを活用する
ここまで、視点のずれとはこのように言い換えられることが出来そうです。
自分の状態と同方向のイメージは増長される。
どういうことか。
卒業単位が不足したまま4年の後期を迎えると、受講している講義のテストが合格しなかった時のことがより悪く想像されたり、
自分の保有している株の価格が上昇している状況では、「もっと上がるかもしれない!」と思ってしまう、
といった例が思い浮かびます。
つまり、
自分にとっていいことが起きている状況では想像されるいいことが過大評価され、
自分にとって悪いことが起きている状況では想像される悪いことが過大評価される。
ということになります。
このような「視点のずれ」効果は、活用するというより必要に応じて抑制する、と言った方が正しいかもしれません。
上で述べた株価の話はその最たる例です。
投資初心者の頃はありがちなのですが、
自分が保有している株で利益が上がり始めるともっと利益が得られると強く思い、
売り時を逃してしまう、といった現象がよく見られます。
利益がなくなる程度ならばまだ良い方で、
最悪の場合は損失が膨らんでしまいます。
さて、今回紹介した「視点のずれ」。
前回とは異なり、抑制すべき機能として紹介しました。
とはいえ、常に抑制すべき機能でもありません。
時には思い切りも大切です。
理想的な意思決定の一つの選択肢としてご理解いただけると幸いです。
GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)